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末期がん患者「自分は桐島聡だ」 爆破事件から半世紀、突然の告白 2024年1月26日 20時59分

 神奈川県の病院に入院中の男が突然、1970年代に起きた連続企業爆破事件の容疑者を名乗った。警視庁は事情を聴き、身元の確認を進めているが、特定されれば事件から49年ぶりとなる。半世紀の空白は今後の捜査で埋まるのだろうか。

偽名を使用 警視庁が身元確認へ

 「自分は桐島聡だ」

 捜査関係者によると、男が突如、入院先でそう言ったのは25日だった。病院は神奈川県警に通報し、その日のうちに警視庁に連絡がきた。警視庁公安部は病院に捜査員を派遣した。

 桐島聡容疑者(70)を名乗る男が入院したのは今年1月。偽名を使っていた。捜査関係者によると、自ら病院を訪れたわけではなく、体調を悪化させて病院に運ばれたとみられる。末期がんと診断され、重篤な状況という。

 毎年11月の「指名手配被疑者捜査強化月間」などには、桐島聡とみられる男の情報なども寄せられていた。捜査幹部の1人は「捜査員がひとつひとつつぶしていく中で、今回は桐島である可能性が比較的高いとみられる」と話す。

 警視庁は身元の確認を進める。一般的には、指紋やDNA型鑑定の手法を使う。警視庁はこの男について、桐島容疑者の親族を探すなどしてDNA型鑑定を試みる方向で、結果が出るまでには少なくとも数日間はかかる模様だ。

 共犯者として国際手配されている大道寺あや子容疑者(75)らが海外逃亡したことにより、桐島容疑者の時効は停止されている。

病院の担当者「患者についてはお答えできない」

 桐島聡容疑者(70)を名乗る男が入院するのは、神奈川県鎌倉市総合病院だ。事情聴取の一報が流れた26日夕、病院前には報道陣が集まった。病院の担当者は取材に「患者についてはお答えできない」と答えた。

 近所の無職男性(70)は「(容疑者とは)年が同じ。東京で起こったすごい事件で、よく覚えている。身柄を確保されたとすればびっくりとしか言いようがない。よくここまで逃げていたなと思う」。散歩中の50代パート女性は「毎日散歩しているが、人も多い病院。こんなところで捕まるなんてびっくり」と驚いていた。

爆破事件で警察庁指定重要指名手配に

 連続企業爆破事件は74、75年に起きた。

 74年8月30日午後0時45分ごろ、東京都千代田区丸の内2丁目の三菱重工のビル正面玄関前に仕掛けられた爆弾2個が爆発。同社社員や通行人ら8人が死亡、380人がけがをした。

 この事件を含め75年5月までに、企業を対象にした爆破事件が都内などで計12件相次いだ。三井物産大成建設、鹿島、間組(当時)などの本社や関係先が狙われた。

 一連の事件では、「東アジア反日武装戦線」の犯行声明が出た。「狼(おおかみ)」「大地の牙」「さそり」のグループがあり、桐島容疑者は「さそり」のメンバーとされる。

 警視庁は75年、8人を逮捕。大道寺あや子(75)、佐々木規夫(75)の両容疑者については、人質事件を受けた「超法規的措置」で釈放され、現在も国際手配されている。

 桐島容疑者は、75年4月の韓国産業経済研究所爆破事件に関わったとする爆発物取締罰則違反容疑で、警察庁指定重要指名手配の対象になっていた。

指名手配犯の長期逃亡は他にも

 指名手配され、身柄確保まで時間がかかったケースは他にもある。

 1971年に東京・渋谷で学生らのデモ隊に警察官が殺害された渋谷暴動事件で殺人などの罪に問われ、一審で懲役20年の判決を受け控訴中の過激派「中核派」の大坂正明被告は、事件後に東京都内の拠点など国内を移動したが、約46年後の2017年に逮捕された。

 長期逃亡を続ける指名手配犯の場合、国外への逃亡で時効が停止するケースが多い。国内で逃亡を続けた大坂被告の場合は、共犯の男が公判停止になり、共犯者の公判中を理由に刑事訴訟法の規定で公訴時効が停止されていた。

 1970年代を中心に世界各地でテロ事件を起こした過激派グループ「日本赤軍」の重信房子・元最高幹部は1975年、フランスで拘束されていたメンバーの解放を求め、オランダ・ハーグでフランス大使館を占拠した事件の指示役だったとして国際指名手配された。71年の出国以降、国外で活動していると思われていたが、2000年11月、大阪府高槻市内で大阪府警に逮捕された。府警が逮捕前に採取した指紋が決め手になったとされる。

 1982年8月に松山市内でホステスの女性を殺害し、指名手配された福田和子・元受刑者(05年に死去)は15年の逃亡の末、時効直前の97年7月に逮捕された。

 13人が死亡し、6千人以上が負傷した1995年3月の地下鉄サリン事件に関与したとして、特別手配されたオウム真理教元信徒の高橋克也受刑者(65)は、約17年間の逃走の末、2012年6月に都内で身柄を確保された。

連続企業爆破事件で対象とされた企業などと発生日

三菱重工(1974年8月30日)

三井物産(74年10月14日)

帝人中央研究所(74年11月25日)

大成建設(74年12月10日)

鹿島建設(74年12月23日)

間組本社6階(75年2月28日)

間組本社9階(75年2月28日)

間組大宮工場(75年2月28日)

韓国産業経済研究所(75年4月19日)

オリエンタルメタル(75年4月19日)

間組江戸川作業所(75年4月27日)

京成江戸川橋工事現場(75年5月4日)