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<正論>日本は核抑止戦略の構築を急げ 麗澤大学特別教授、元空将・織田邦男 2024/5/7 08:00

麗澤大学特別教授、元空将・織田邦男

対北「専門家パネル」廃止で

北朝鮮制裁の履行状況を監視する国連安全保障理事会の専門家パネルの任期が4月末で切れた。任期を5月以降も延長する決議案に対し、北朝鮮と友好関係を結ぶロシアが拒否権を行使し、専門家パネルは廃止に追い込まれた。

これまで北朝鮮は、安保理決議を無視する形で弾道ミサイルを発射し、軍事挑発を続けてきた。一昨年には約60発、昨年は25発以上の弾道ミサイル等を発射した。今年に入ってから既に約10発の弾道ミサイル巡航ミサイルを発射している(4月22日時点)。4月2日に発射したミサイルは極超音速滑空体搭載の新型中距離弾道ミサイル「火星16B」と発表された。日本の弾道ミサイル防衛システムでは迎撃が難しいミサイルである。

北朝鮮は6回の核実験を実施し、既に小型化、弾頭化を実現している(防衛白書)。昨年3月には「戦術核弾頭」を初公開し、9月には初の「戦術核攻撃潜水艦」を進水させた。同月の最高人民会議では憲法に核戦力強化の明記を決め、核弾頭の大量生産を示唆した。2027年までに最大242発の核弾頭を保有するとの見積もりもある(米国ランド研究所と韓国峨山政策研究院の共同研究)。

脅威は「意図」と「能力」の掛け算である。北朝鮮は両者を有し脅威は明白だ。17年8月、金正恩総書記は「日本列島ごときは、一瞬で焦土化できる能力を備えて久しい」と述べた。同年9月には「朝鮮アジア太平洋平和委員会」が「日本列島は核爆弾により海に沈められなければならない」と「意図」を明らかにしている(17年9月14日、朝鮮中央通信)。

日本の国家安全保障戦略には「北朝鮮は、核戦力を質的・量的に最大限のスピードで強化する方針であり、ミサイル関連技術等の急速な発展と合わせて考えれば、北朝鮮の軍事動向は、我が国の安全保障にとって、従前よりも一層重大かつ差し迫った脅威となっている」とある。専門家パネルがなくなれば、対北朝鮮制裁は更に無効化される。

脅威に政府の動き鈍い

ロシアに弾薬提供した見返りの先端軍事技術支援もあり、北朝鮮の核・ミサイル整備はますます加速するだろう。日本にとって北朝鮮の非核化は譲れない。だが、「重大かつ差し迫った脅威」の割には、日本政府の動きは鈍い。

バイデン政権の北朝鮮に対する危機意識は希薄である。米国家安全保障戦略には、「拡大抑止を強化しつつ、朝鮮半島の完全な非核化に向けて具体的な進展に向けた外交を模索する」とある。これは事実上、何もしない宣言に等しい。トランプ政権が目指したCVID「完全で検証可能かつ不可逆的廃棄」の目標は消滅した。17年8月、オバマ政権で大統領補佐官を務めたスーザン・ライス氏が「核なき世界」という論考を発表した。「北朝鮮が核を放棄する見込みはない(略)必要であれば、我々は北朝鮮核兵器を容認できる」という核容認論である。バイデン政権はこの延長上にあるようにみえる。

4月10日の日米首脳共同声明「未来のためのグローバル・パートナー」では、「国連安保理決議に従った北朝鮮の完全な非核化に対するコミットメントを改めて確認する」とある。だが「次回の日米『2+2』の機会に、拡大抑止に関する突っ込んだ議論を行うよう、日米それぞれの外務・防衛担当閣僚に求める」とあり、非核化への当事者意識も意欲も感じられない。日本は米国の脅威認識に引きずられてはならない。

怯えるだけでは御し易し

北朝鮮ICBMが、米国本土に届くようになれば、米国の「核の傘」は「破れ傘」と化す。昨年12月、米国本土に届く固体燃料の「火星18号」(射程1万3千キロ)が初発射された。米国の拡大抑止が機能不全に陥れば、日本は北朝鮮の核の前に為(な)す術(すべ)を持たなくなる。脅威に怯(おび)え、右往左往して妥協を繰り返すだけでは、主権国家とは言えない。「独裁国家が強力な破壊力を持つ軍事技術を有した場合、それを使わなかった歴史的事実を見つけることができない」と歴史家は語る。北朝鮮を決して侮ってはならない。

ウクライナ戦争で、核大国ロシアは非核保有ウクライナを核で威嚇、恫喝(どうかつ)した。その結果、核不拡散体制は瓦解(がかい)寸前にある。北朝鮮が核放棄しないだけでなく、核保有を目指す覇権主義国家が続々と現れるだろう。専門家パネルの消滅は、「核拡散」の引き金となるかもしれない。

破れつつある核の傘」に執着し、脅威から目を背け、「非核三原則」を壊れたレコードのように繰り返すだけでは平和と安定は保てない。紙幅の関係上、中国の核については触れなかったが、問題は同じである。核の脅威にただ怯えているだけでは、それを保有している国からみれば、最も御し易い国に違いない。降りかかる「核の脅威」をどう撥(は)ねのけるか。核抑止戦略の構築は待ったなしだ。タブーなき議論を直ちに開始し、早急に核抑止戦略を構築しなければならない。(おりた くにお)